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糖尿病内科

糖尿病内科とは

糖尿病内科では、糖尿病専門医が糖尿病および糖尿病に関連した疾患の治療を行っています。
糖尿病は放置すると恐ろしい合併症が出現します。3大合併症としては眼、腎臓、神経が侵されることが有名ですが、これらが進行することにより失明、 腎不全、透析、足の壊疽という結末を迎えることになります。更に糖尿病は日本人の死因の約1/3を占める心筋梗塞や脳卒中の重大な危険因子となっています。

また、糖尿病は認知症や癌、歯周病の発症とも関連しています。糖尿病の治療は、血糖を適切にコントロールすることにより、これら合併症の出現、 進展をいかに防ぐかが大きな目的です。糖尿病内科では、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、また院内他科と連携しての合併症精査加療など、チーム医療により専門的な糖尿病診療を行っております。

以下のような症状がある場合は、糖尿病内科の受診をお勧めします。

  • のどが渇く(口喝)
  • たくさん水を飲む(多飲)
  • 尿がたくさん出る(多尿)
  • 体重が減る
  • 倦怠感

このほか、健診で尿糖、高血糖を指摘された方、身内に糖尿病の人が多いなど、糖尿病が疑われる場合は是非ご相談ください。

  • 特定健診では、空腹時血糖値が100から125mg/dLで特定保健指導、126mg/dL以上で医療機関への受診が推奨されています。

糖尿病の分類

糖尿病は「インスリン」に問題が生じることで発症しますが、問題となる原因によって、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病などのタイプに分けられます。

1型糖尿病 遺伝などでは無く、後天的な原因により、膵臓から出るインスリン(血糖値を下げる、唯一のホルモン)が分泌されなくなり発症します。インスリンが絶対的に不足している状態のため、必ずインスリンが必要になります。
2型糖尿病 膵臓から分泌されるインスリン(血糖値を下げる、唯一のホルモン)が、様々な原因で不足したり、その効き目が悪くなったりすることで血糖値が上昇しています。発症には家系などの遺伝要因や生活習慣などの環境要因が密接にかかわっており、いくつもの要因が重なり合って発症すると考えられています。
その他
特定の型
内分泌系の病気や膵臓、肝臓の病気、ある種の薬剤、遺伝子異常などが原因で発症する糖尿病です。
妊娠糖尿病 妊娠中に初めて見つかる軽い糖代謝異常を、妊娠糖尿病といいます。
(明らかな糖尿病は妊娠糖尿病には含めません)

合併症について

糖尿病の代表的な合併症として、以下のような細小血管症と、大血管症があります。

細小血管症
(糖尿病の3大合併症と言われています)
  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病性神経障害
大血管症
(糖尿病による動脈硬化などが原因とされています)
  • 脳梗塞
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 末梢動脈疾患
  • 足病変

など

細小血管症

糖尿病性網膜症

網膜を走行する血管に障害が生じ、放置していると出血が起き、視力の低下や失明を引き起こすことがあります。進行するまでは自覚症状が無いことも多いため、糖尿病と言われたら、まずは眼底の検査をうけることが重要です。また、糖尿病は白内障や緑内障の原因にもなります。

糖尿病性腎症

腎臓を構成する糸球体の毛細血管に障害が生じ、子宮体の数が減少してしまうことで腎機能が低下、余分な水分や老廃物を体外に排出できなくなり、重症化すると人工透析が必要になります。慢性腎不全(CKD)による人工透析を行っている人の3分の1は、糖尿病性腎症によるといわれています。

糖尿病性神経障害

高血糖による神経細胞の変化や、動脈硬化による神経細胞への血流が滞ることで神経に障害が起こります。まず初めに生じるのが、自律神経障害で、発汗の異常や、胃の不調、便秘や下痢、排尿障害、勃起不全(ED)、たちくらみ(起立性低血圧)、他に足のつり(こむら返り)などが起きることがあります。悪化すると手足の末梢神経のダメージにより、手足の裏の痺れや、火傷やけがをしても痛みがなく気づかない、という場合もあります。

大血管障害

狭心症・心筋梗塞

心臓に酸素と栄養を送っている冠動脈が動脈硬化を起こし、内部が狭窄あるいは完全閉塞すると、そこから先の心臓の筋肉に十分な酸素が供給されなくなります。すると心筋がダメージを受け、狭心症や心筋梗塞を発症します。心筋梗塞の典型的な症状は、胸の強い締め付けや痛みですが、糖尿病の神経障害がある方では、その痛みを感じない無痛性心筋梗塞が生じる可能性があります。非常に危険ですので、心臓の定期的な検査を受ける必要があります。

脳梗塞・脳出血

脳の血管に動脈硬化が起こり、血管の内腔が狭くなり詰まってしまうと、そこから先に血液が届かなくなり、脳梗塞を起こします。また、脆くなった血管が破れると、脳出血を起こします。脳梗塞・脳出血の症状は、障害を受けた脳の部位に応じて様々ですが、命が助かったとしても、半身麻痺になったり言語障害や認知症を起こしたりする場合があります。

末梢動脈疾患

足の血管が高血糖による動脈硬化でダメージを受けると、足への血流が悪くなります。進行すると、足が冷えやすくなったり、足の皮膚の色が悪くなったりします。また、間欠性跛行(しばらく歩くと足が思うように動かなくなり、休むとまた歩けるようになる)という症状が生じるようになります。このような血流不全に加え、先述の神経障害が存在すると、白癬(水虫)などのちょっとした感染を契機として足に壊疽が生じ(「糖尿病性壊疽」)、足を切断しなければならなくなることもあります。

糖尿病内科で行う検査について

糖尿病は、診断時および初期に行われる検査と治療過程において効果や合併症の有無などを確認するために継続して行われる検査があります。

診断時および初期に行われる検査

血糖値による診断を行います。血糖値は診断のためにまず参考にされる検査値で、空腹時血糖値、随時血糖値、食後2時間血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)による血糖値などを測定し診断します。

治療過程において継続して行われる検査(日常の検査)

検査方法 検査結果からわかること
インスリン分泌量の測定 インスリン分泌量を測定することによって病態が推定でき、1型糖尿病か2型糖尿病かを診断できます。
血糖値の測定 血糖値のコントロールがきちんとできているかどうかを把握するために、空腹時血糖値、食後2時間血糖値を定期的に測定します。
ヘモグロビン
エーワンシー
(HbA1c)
食事の影響を受けないため、血糖値のコントロールがきちんとできているかどうかを把握する指標として適しています。食事の影響を受ける血糖値とは異なり、採血時から過去1、2ヵ月間の平均血糖値を反映しています。
グリコ
アルブミン
HbA1cよりも血液中に存在する期間が短く、採血時から過去約2週間の平均血糖値を反映しています。
血圧、血清脂質
(コレステロール、中性脂肪)
糖尿病の合併症である脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は、高血圧や脂質異常症(高脂血症)が重なる事で発症の危険度が高くなります。そのため、血圧や血清脂質のコントロールも重要になります。血圧値はご家庭でも測定できます。
視力検査、眼底検査、視野測定 三大合併症の一つである網膜症では、視力や視野の検査のほか、網膜や硝子体での新生血管や出血などを確認するため、眼底の血管や網膜などを調べます。

糖尿病内科で行う治療について

糖尿病の治療の目的

糖尿病の殆どを占める、2型の方は、長年にわたる食生活が原因となっていることが主です。そのため、まず食事指導、運動療法等が基本となります。

食事療法、運動療法を十分に行っても、良好に血糖値がコントロールできない場合には薬物療法を併用します。また、インスリンが絶対的に不足している1型糖尿病の方にはインスリン注射による治療が基本となります。

飲み薬には、インスリン分泌を膵臓に働きかけて促す薬、食後の高血糖に対して血糖の吸収を遅らせる薬、インスリンの効果を高める薬、血糖値が高い時にのみ効果を発揮する薬などがあります。

血糖値をコントロールする方法

糖尿病の食事療法

  • 適切なエネルギー量の食事
  • 栄養素のバランスが良い食事
  • 糖尿病合併症の発症、進展防止を図れる食事
  • 規則的な食事

糖尿病のタイプ(1型や2型など)にかかわらず、糖尿病の治療において基本となる治療方法です。
糖尿病の食事療法では、食べてはいけない食品があるわけではなく何を食べても構いませんが、適正なエネルギー量を適正な栄養バランスで適正な時間に摂取することが重要になります。
また、外食や間食、アルコール摂取時などは1日に摂取するエネルギー量が過剰になりがちですので、注意が必要です。

糖尿病の運動療法

食事療法とともに、糖尿病治療において基本となる治療法です。
運動によって、ブドウ糖や脂肪酸の体内での利用が促進されて血糖値を低下させたり、インスリン抵抗性(インスリンの効き易さ)を改善したりすることが知られています。
ただし、合併症がある場合や薬剤で治療している場合は運動が制限されることもありますので、運動の種類や強さ、時間、回数などは医師の指導の下、適正に行うことが必要です。

糖尿病の薬物療法

糖尿病の薬物療法には、経口血糖降下薬とインスリン注射があります。
1型糖尿病ではインスリン注射が不可欠ですが、2型糖尿病では食事療法や運動療法を行っても血糖値が高い状態が改善されない場合は、まずは経口血糖降下薬を服用します。
それにもかかわらず、血糖値が改善されない場合は、経口血糖降下薬の増量や2剤以上の併用、さらにはインスリン注射の併用や、インスリン注射への切り替えが行われます。

血糖コントロールの効果の確認とその目標

血糖値が適切な範囲に維持されていることを確認することで治療の効果を確認します。具体的には、血液検査で、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)などを測って、確認します。またその目標としては、糖尿病の合併症をおこさない、または悪くさせないためには、HbA1cを7%未満にしておくのが良いと言われています。

目標 血糖正常化を目指す際の目標
注1)
合併症予防のための目標
注2)
治療強化が困難な際の目標
注3)
HbA1c(%) 6.0 未満 7.0 未満 8.0 未満

治療の目標は、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定します。

【注意】

  1. 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とします。
  2. 合併症予防の観点からHbA1cの目標を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間の血糖値が180mg/dL未満をおおよその目安とします。
    低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とします。
    いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとします。
    • 日本糖尿病学会編・著 糖尿病治療ガイド2016-2017 27 頁 文光堂2016より改変
  3. 実際には、一人一人からだの状態や治療内容が違うため、目標値はその方に合わせたものを考えます。ご年配の方や合併症が進んでいる方では、血糖コントロールの目標を少し緩やかにした方がよいとされ、若い方や妊娠中の方はより厳しい方がよいとされます。ご自身の目標を主治医と確認しておきましょう。

血糖コントロール以外に気をつけること

体重・血圧・血清脂質(血中コレステロールの値)

血糖コントロール以外では、体重、血圧、血清脂質(血液中のコレステロールの値)に注意する必要があります。肥満や高血圧、脂質異常症は糖尿病と同じように、動脈硬化や内臓の障害に影響します。体重は、標準体重 (BMI=22)より多い方は標準体重を目標として減量しますが、現時点でそれよりかなり体重が多い方は、今の体重を5%減らすことを当面の目標とします。

糖尿病の方の体重・血圧・血清脂質の目標値
体重 標準体重(kg) = 身長(m) × 身長(m) ×22
血圧 糖尿病の方の目標値
  • 収縮期血圧:130mmHg未満
  • 拡張期血圧:80mmHg未満
  • 脳血管障害・冠動脈疾患のある方:140/90mmHg未満
  • 75歳以上の高齢者の方:150/90mmHg未満
    無理なく下げられるのであれば140/90mmHg未満
血清脂質
  • LDLコレステロール:120mg/dL未満
    • 冠動脈疾患のある方:100mg/dL未満
  • HDLコレステロール:40mg/dl以上
  • 中性脂肪(早朝空腹時):150mg/dl未満

禁煙

糖尿病の方は、ぜひ禁煙をしてください。タバコを吸うことは血管が硬くなったり、狭くなったりする動脈硬化(いわゆる血管の老化)を進めます。動脈硬化は、糖尿病の慢性合併症である、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足病変などの大血管症を進めます。さらには、腎臓の障害をはじめ、細小血管症も進めます。

合併症の状態

定期的に合併症の状態を確認するための検査を受けることも大切です。

糖尿病の合併症を調べる検査

神経障害
  • アキレス腱反射
  • 振動覚
  • 神経伝導検査
  • 心拍変動検査(CVRR)
網膜症
  • 眼底検査
腎症
  • 血液検査(BUN、クレアチニン)
  • 尿検査(尿中アルブミン、尿タンパク)
足病変
  • 足の定期チェック(ひび割れ、白癬(水虫)、たこ、うおのめ、足の変形、など)
  • フットケア
    • フットケアとは大切な足を守るために、自身の足を毎日よく観察して、普段から足に傷を作らないよう細心の注意をはらい、日々ケアを行うことをいいます。
大血管症
  • 頸動脈エコー
  • 心電図
  • 胸部X線
  • 血圧脈波検査(ABI+PWV)
歯周病
  • 歯科診察

糖尿病治療を成功させるには

継続しましょう

糖尿病は、「治す」よりも「コントロールする」病気です。頑張り過ぎず、諦めず、長くお付き合いしていくことが最も大切です。上手にお付き合いをすれば、重い合併症を防ぐことができます。特に食事療法、運動療法は、急激に頑張りすぎると続かないことがあります、できることから少しずつ継続していきましょう。

セルフモニタリングをしましょう

糖尿病は、よほどひどくないと症状がありません。症状があてにならない病気ですので、定期的に血糖値、体重や血圧などを測定して、記録しておきます。これらの値が望ましいコントロールの範囲だと、治療を継続するための励みになります。運動の継続のために、万歩計を活用したりするのも良いでしょう。

サポーターをつくりましょう

糖尿病の治療は、生活習慣の改善が必要であり、そして長く続けることが大切です。食事をはじめ、生活にかかわるご家族、友人、職場の方で、糖尿病を理解し、あなたを支えてくれるサポーターをみつけましょう。もちろん、治療方針をあなたと一緒に決める主治医、治療をうまく生活に取り入れる工夫を一緒に考える看護師や保健師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師や歯科医師など、医療機関のスタッフも、あなたのサポーターです。 糖尿病の治療は、糖尿病の方を主役とした、チームで取り組むことが成功の秘訣です。

担当医師紹介

北村 竜一

専門

糖尿病内科、内分泌内科