臨床工学科とは
聞きなれない言葉だと感じる方もいらっしゃると思います。
臨床工学技士とは、厚生労働省の認める国家資格であり、法律では「医師の指示のもとで、生命維持管理装置の保守点検および操作を業とするもの」とされています。
生命維持管理装置とは、肺・心臓・腎臓といった生命を維持するための器官の代行を行う装置のことで、そういった重要装置を専門的に扱っています。また、日進月歩の医療界において特に移り変わりの激しい分野でもあるため、常に新しい機器に対応するための努力が必要とされます。
臨床工学科の業務
人工心肺業務、心臓カテーテル、ペースメーカ、血液浄化業務、医療機器管理業務を主な職場としており、各専門分野での医療機器を使用した臨床業務、医療機器の管理、日当直業務を含めた緊急時対応を行っています。
各専門分野での最新で高度な医療技術を提供する為に、各種専門認定制度の取得にも力を入れています。
- 呼吸療法認定士
- 透析技術認定士
- 体外循環技術認定士
- 第1種ME技術認定心血管インターベンション技師
- 医療機器情報コミュニケーター(MDIC)臨床高気圧酸素治療装置操作認定技師
人工心肺業務
心臓を停止しなければ行えない開胸手術の際に、心臓と肺の代わりとなる人工心肺装置で体外循環を行います。人工心肺装置の他に、心筋保護液注入装置やヘモコンセントレーターといった周辺装置も扱います。高度な技術、知識が必要なため熟練したスタッフにより操作されています。
心臓カテーテル
心臓カテーテル室
心臓カテーテル検査・治療、ペースメーカ植込み等が行われており、これらの検査、治療に使用される全ての医療機器の操作、管理を行っています。
急性心筋梗塞の患者さんなどで昼夜を問わず検査、治療を行っているため、緊急呼出しにも対応しています。
心臓カテーテル検査
主に狭心症や心筋梗塞、弁疾患など、循環器系の疾患の患者さんにこの検査を行います。カテーテルといわれる細い管を使用して、心内圧測定、冠動脈造影、心室造影、大動脈造影など行い医師が診断します。
ポリグラフの操作やFFRの実施、IVUS操作などが主な業務です。
ペースメーカ
ペースメーカ植込み
徐脈性不整脈に対するペースメーカの植込みが行われています。臨床工学技士は植込手術時の生体モニタリングの他にプログラマー操作、ペーシングシステムアナライザー（PSA）操作を行っています。将来的には、特殊なペースメーカとして頻脈性不整脈に対してICDや重症心不全に対してCRTの植込みが行えるように施設認定を目指して日々業務にあたっています。
ペースメーカ外来
ペースメーカを植込まれた患者さんに異常がないかプログラマーを使用して定期的に確認を行っています。
近年は家庭でモニタリングする機器も増えてきており、導入のお手伝いやインターネットを経由したPC上での観察業務も増えています。
血液浄化業務
血液透析
慢性腎不全の患者さんの急性増悪時、周術期など入院加療時の一時的な維持透析、また救命救急センターにおいて急性腎不全や各種膠原病、薬物中毒に対しての血液浄化治療をメインとして行われています。
CHDF
救命救急センターにおいて、全身状態が不安定な患者さんに24時間かけてゆっくりと行う血液浄化療法です。一般の血液透析と比べ、身体への負担が少ないです。手術後や病気の合併症等で急性腎不全に陥った場合や、慢性透析患者さんの手術後などに行います。
血漿交換（PE）
患者さんの血漿を抜き取り、代わりに新鮮凍結血漿（FFP）というヒト血漿を患者さんに輸血します。肝炎等でピリルビン値が高い時や、膠原病等で患者さんの抗体を除去したい時に行います。
血漿吸着（PA）患者さんの血液から血漿を分離して、その血漿をさらに特異的に吸着作用のある物質が詰まった筒に通します。吸着されるターゲットとしては、ピリルビンや抗体などがあります。
腹水濾過濃縮再静注法（CART）
お腹に溜まった腹水を取り出し、余計な成分を濾過した後に濃縮し、身体にとって必要なタンパク成分を静脈から戻してあげます。
その他
白血球除去（LCAP）、エンドトキシン吸着
機器管理業務
各種人工呼吸器、補助換気装置、補助体外循環（PCPS）、大動脈バルーンパンピング装置（IABP）といった緊急性のある装置、脳低体温治療を行う装置(アークティックサン)、輸液ポンプ、シリンジポンプ、各種モニタ装置及びケーブル類といった機器をいつでも使える状態で置いてあります。
人工呼吸器、補助循環装置が稼働していれば、ラウンドを行い安全に使用できているかチェックを行います。
院内の医療機器安全管理の一環から各医療機器の点検を行っています。その他には院内での勉強会や注意喚起の発信などを行っています。